恋の古語には、現代では表現しきれない繊細な感情が込められています。
「恋ふ」「しのぶ」「想ふ」など、ひとつひとつの言葉には千年以上前の恋する人々の心が生きています。
ここでは、恋にまつわる古語120語以上を、意味・使い方・和歌とともにカテゴリ別に解説します。
「恋 古語 意味」を調べているあなたにとって、読むだけで感情が動く古語の世界が待っています。
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恋心を言葉で味わい直したいあなたへ。古語の世界に触れてみませんか?
恋にまつわる古語 一覧
① 直接的な恋語(動詞・名詞)
《恋する気持ちを真っ直ぐに表す古語たち》
ここでは、恋愛感情を直接的に表す動詞や名詞を紹介します。
「恋ふ」「慕ふ」「想ふ」などの言葉は、万葉集から平安和歌、物語文学まで広く使われています。
素朴で力強い感情が込められた言葉です。
1. 恋ふ(こふ)
相手に会えずに恋い慕う気持ちを表す基本語。和歌では最頻出クラスの恋語。
2. 恋(こひ)
名詞形。「恋ひわたる」「恋のやまひ」などと使われ、心を焦がす情熱を示す。
3. 想ふ(おもふ)
恋だけでなく、物事や人について深く心にかけること。恋愛表現でも多用。
4. 慕ふ(したふ)
後を追い求めるように恋しく思う。主に相手に向かっていく恋情を表す。
5. 慕ひよる(したひよる)
慕って近づいていくこと。『源氏物語』などで使用される。
6. 愛づ(めづ)
美しいものや人を愛でる。恋の対象への称賛や心酔の気持ち。
7. 愛(あい)
抽象的な「愛」ではなく、具体的な情愛。近世文学では「愛想」などに派生。
8. 思ほゆ(おもほゆ)
自然と心に浮かぶように思う。恋しさが抑えきれず湧いてくる感情。
9. 恋し(こひし)
形容詞。「恋しい」に近い。「恋しうて、夜も寝られず」のように使う。
10. 恋ひし(こひし)
連体形・連用形での使用が多く、過去の恋しさを示すことも。
11. 思ひやる(おもいやる)
遠くにいる相手を思い遣る。和歌では「恋のやるかたなさ」と関係。
12. しのぶ(偲ぶ)
会えぬ相手を思いしのぶ。人目を忍ぶ恋(忍ぶ恋)にも用いられる。
13. かなし(愛し・悲し)
恋愛文脈では「いとかなしく候ふ」=とても愛おしく思う、のように使われる。
14. まどふ(惑ふ)
心が乱れる。「恋にまどふ」のように、自制できない心の動揺。
15. あこがる(憧る)
遠くの人や存在に惹かれ、心が引かれていくこと。「あこがれし君は……」
16. おもひわづらふ(思ひ煩ふ)
思いすぎて心が病むような状態。恋煩いそのもの。
17. しのびね(忍び音)
恋しさに耐えきれず漏れるため息・声。「しのび音のもるる涙ぞ」
18. たぐふ(手ぐふ)
連れ添う、共にいる。「君とたぐひて世を渡らまし」=一緒に生きたい。
19. いとほし(愛し)
現代語の「かわいそう」とは違い、「愛おしい・守りたい」ニュアンス。
20. つま(夫・妻)
恋の相手、配偶者。「吾が背子」「わがつま」など、和歌によく登場。
21. 君(きみ)
恋の相手を敬意を込めて呼ぶ語。男女問わず使用される。
22. あやしむ(怪しむ)
不安に思う、疑う。「君の心変はらぬや」といった文脈で登場。
23. うつろふ(移ろふ)
恋心の変化、相手の心変わりなどに。季節や花にも例えられる。
24. なつかし(懐かし)
親しみを感じる。愛着と安らぎを伴う恋の感情。
25. うれふ(憂ふ)
嘆き悲しむ。恋愛関係の破綻や片思いの苦悩にしばしば用いられる。
② 感情・状態の描写語(苦しみ・喜びなど)
《恋の喜びと苦しみを繊細に語る感情表現》
恋愛によって生じる心の揺れや苦しみ、またはときめきや嫉妬などの心情の描写に使われる古語です。
1. しのぶ(忍ぶ)
人目を忍んで恋する、あるいは会えぬ相手をひそかに思い続けること。忍ぶ恋は和歌の定番。
2. なやむ(悩む)
恋の苦しみによって心身ともに弱る。平安文学では「恋に悩む」が常套句。
3. やるかたなし
思いを伝える手段もなく、心が晴れない状態。「恋のやるかたなし」の形で多く登場。
4. まどふ(惑ふ)
気持ちが乱れて、どうしてよいか分からない。「恋にまどふ人」など。
5. なげく(嘆く)
恋の苦しみや孤独、相手に会えないことなどへの嘆き。
6. いとはし(厭はし)
自分の境遇や恋の苦悩が嫌になる。「世をいとはしと思ふほどに……」
7. うらなし(心無し)
心が落ち着かず、気持ちが乱れる様子。あるいは恋人の心変わりに対して使われることも。
8. おもひくんず(思ひ屈ず)
恋に悩んで沈んだ気持ちになること。「思ひ屈じてやみにけり」
9. あはれ(哀れ)
しみじみとした感情。恋の喜び・悲しみの両方に使われる感動語。
10. うれふ(憂ふ)
嘆き・悲しみ・心配すること。恋が成就しないことへの憂い。
11. うれし(嬉し)
現代語と同じく、嬉しい感情。ただし、平安文学では慎ましやかな喜びを含む。
12. こころぐるし(心苦し)
恋する相手のことが気がかりでつらい、または自分の恋心がつらい。
13. あかず(飽かず)
名残惜しい、心残りな状態。「見てもあかぬ恋しさ」など。
14. いぶせし
気が晴れない、もやもやする。相手の反応が見えないときなどに使う。
15. いぶかし(訝し)
不安に思う・気になる。恋人の心のうちが読めず、思いを募らせるときに。
16. わびし(侘し)
孤独や寂しさ、心細さ。和歌で恋の「わびしさ」が詠まれることは多い。
17. あたらし(惜し)
失うのが惜しいという意味で、恋人との別れなどに用いられる。
18. あらまほし(有らまほし)
こうありたい、理想的であってほしいという願望。恋愛の願いに込めて。
19. つれなし
そっけない、冷たい態度。恋人がよそよそしくなる様子。
20. いたはし(労はし)
大切に思う、愛情を込めて気づかう。「君のことをいたはしく思ふ」
21. たのもし(頼もし)
安心できる、信頼できる気持ち。恋の安定や期待に通じる。
22. こころづきなし(心付き無し)
気に入らない、しっくりこない。恋愛相手との違和感などにも使う。
23. こころよし(心良し)
心地よい、愛情が心にしみてうれしい感情。
24. しほたる(潮垂る)
涙がこぼれることを、海の潮にたとえた語。「袖しほたる」
25. いたづら(徒ら)
むなしい・むだな。報われない恋の寂しさを表す。
26. かこつ(託つ)
嘆く、恨みごとを言う。「君にかこちて涙ぞ落つる」
27. もの思ふ(物思ふ)
物思いに沈む、恋に悩んで気が塞がる様子。
28. ものぐるほし(物狂ほし)
恋のあまり正気を失う。「恋ひ狂ふ」などと結びつく。
29. こころみだる(心乱る)
心がかき乱される。激しい恋情、嫉妬にも。
30. こころときめく(心ときめく)
好きな相手に会える・思いが通じる時の胸の高鳴り。
31. こころうし(心憂し)
つらい・情けない気持ち。恋がままならぬときに。
32. こころやすし(心安し)
安心できる関係や、落ち着いた恋を表す。
33. ねたし(妬し)
嫉妬の感情。「他の人と話す君がねたし」など。
34. たえがたし(堪え難し)
恋の苦しみに耐えられないという表現。
35. おぼつかなし(覚束なし)
はっきりしない、不安。相手の気持ちがつかめないときなどに。
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