月は、古来より人々の感情や風景、信仰までも映し出す鏡のような存在でした。日本語には、月を詠むための美しい言葉が数多く存在し、和歌や俳句、漢詩、さらには仏教の思想や神話にも深く根ざしています。
ここでは月を表す美しい日本語表現 87語をカテゴリ別に一覧でご紹介します。
幻想的な月の言葉に触れることで、日本語の奥深さや情緒の豊かさを再発見できることでしょう。
月に関する美しい言葉 一覧
1. 月の名前と異名 – 日本語に宿る月の情緒とは
旧暦に基づいた「如月」「葉月」などの月名や、「朧月」「望月」といった別称には、日本人の自然観や季節感が繊細に織り込まれています。これらの月の異名は、詩歌や俳句、古典文学にも頻繁に登場し、日本語の美しさを象徴する重要な言葉群です。
- 睦月(むつき) – 旧暦1月の異称。「睦び月」が語源で、親族が集まり仲睦まじく過ごす月を意味します。
- 如月(きさらぎ) – 旧暦2月。衣を更に着る「衣更着」から来たとされ、寒さが残る時期。
- 弥生(やよい) – 旧暦3月。「弥(いよいよ)生い茂る」から、草木が芽吹く春を表します。
- 卯月(うづき) – 旧暦4月。卯の花が咲く季節にちなみます。
- 皐月(さつき) – 旧暦5月。「早苗月(さなえづき)」の略で、田植えの季節。
- 水無月(みなづき) – 旧暦6月。水が「無い」のではなく、「水の月(=田に水を張る月)」という意味。
- 文月(ふみづき) – 旧暦7月。短冊に和歌を記す「文披月(ふみひらきづき)」からとも。
- 葉月(はづき) – 旧暦8月。木の葉が落ち始める「葉落ち月」が由来とされます。
- 長月(ながつき) – 旧暦9月。夜が長くなる「夜長月」が語源。
- 神無月(かんなづき) – 旧暦10月。神々が出雲に集まるとされ、他の地に神がいない月。
- 霜月(しもつき) – 旧暦11月。霜が降り始める時期に由来します。
- 師走(しわす) – 旧暦12月。師(僧侶)も走るほど忙しい月とされます。
- 望月(もちづき) – 満月のこと。月が満ちる様子を意味します。
- 朧月(おぼろづき) – 春の夜、霞んだようにぼんやりと見える月のこと。
- 寒月(かんげつ) – 冬の寒空に冴え渡る月のこと。
- 夕月夜(ゆうづくよ) – 夕方から夜にかけて月が見える情景を表します。
- 春月(しゅんげつ) – 春の夜に見える穏やかな月。
- 秋月(しゅうげつ) – 秋の澄んだ空に浮かぶ月。中秋の名月を指すことも。
- 天心の月(てんしんのつき) – 空の真上に月が来た状態を表す雅語。
- 雲間の月(くもまのつき) – 雲の切れ間から覗く月の情景。
2. 月の満ち欠けにまつわる言葉 – 新月から満月までの美しき呼び名
月の形は日々変化し、その姿に合わせて「三日月」「十六夜」「有明の月」など、細やかな表現が生まれました。これらの言葉は、季節の移ろいや心の機微を表す際にも使われる、日本語ならではの感性の産物です。
- 新月(しんげつ) – 月が地球と太陽の間に位置し、夜空に見えない月。
- 三日月(みかづき) – 月齢3日頃の、細く弓なりの月。始まりの象徴とも。
- 上弦の月(じょうげんのつき) – 半月。右側が明るく、月齢7日頃。
- 十日夜の月(とおかんやのつき) – 月齢10日前後の月。東北地方では収穫祭の時期。
- 十三夜(じゅうさんや) – 満月前の美しい月。秋の風習として栗や豆を供える。
- 十四夜(じゅうしや) – 満月直前の月。別名「小望月(こもちづき)」。
- 十五夜(じゅうごや) – 中秋の名月。満月とされ、観月行事が行われる。
- 満月(まんげつ) – 月が完全に丸く見える状態。望月とも。
- 十六夜(いざよい) – 満月の翌日の月。「いざよう=ためらう」から名付けられた。
- 立待月(たちまちづき) – 十七夜の月。立って待つほど月の出が遅くなる。
- 居待月(いまちづき) – 十八夜。座って待つ月。
- 寝待月(ねまちづき) – 十九夜。月の出がさらに遅くなり、寝ながら待つ月。
- 更待月(ふけまちづき) – 二十夜頃。夜更けにようやく昇る月。
- 有明の月(ありあけのつき) – 夜明けまで空に残る月。別れや余韻を表現することも。
- 下弦の月(かげんのつき) – 月齢22日頃の半月。左側が明るい。
- 弓張月(ゆみはりづき) – 三日月を弓に見立てた表現。古典文学にも登場。
- 既望(きぼう) – 十六夜頃の月。「すでに望月を過ぎた月」。
- 晦日(つごもり) – 月の終わりの日。月籠りに由来。
- 朔(さく) – 新月の時を示す語。天文学的表現。
- 望(ぼう) – 満月を意味する、古典的な月齢用語。
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