⑨ 古語・雅語に見られる感情表現
古典文学や和歌、物語の中でよく使われた感情表現を独立したカテゴリとしてまとめます。「あはれ」「いとおし」「うたてし」「かなし」など、現代では使われにくいが日本語の情緒を深める言葉を解説します。
- あはれ ― しみじみとした感慨や悲しみ。
- かなし ― 愛おしさや悲しみを表す。
- いとほし ― 不憫に思う、気の毒に感じる。
- うたてし ― 嫌だ、情けないと感じる。
- をかし ― 趣があり、心がひかれる。
- あぢきなし ― どうしようもなくつまらない。
- かしこし ― 畏れ多い、または非常に優れている。
- つれなし ― 平然としている、無関心。
- いみじ ― 程度が甚だしい、すばらしい。
- こころぐるし ― 気の毒で見ていられない。
- あいなし ― 筋が通らず、つまらない。
- うるはし ― きちんとして美しい。
- らうたし ― かわいらしく愛おしい。
- わびし ― 心細くつらい。
- すさまじ ― 興ざめである。
- なつかし ― 心惹かれ親しみを覚える。
- をし(惜し)― 手放すのが惜しい、愛しく思う。
- むつまし ― 親しく、愛情深い。
⑩ 複雑な心情をあらわす言葉
一つの言葉で単純に表せない、入り混じった感情を示す語を集めます。「切ない」「もどかしい」「後悔」「懐かしい」など、喜びや悲しみが混ざる心の揺れを表す表現です。
- もどかしい ― 思うようにいかず焦る気持ち。
- せつなさ ― 悲しみや寂しさが入り混じる感情。
- 後悔(こうかい)― 過去を悔やみ心を痛める。
- 未練(みれん)― 諦めきれず心が残る。
- 複雑(ふくざつ)― 心が入り組んで単純でない。
- 矛盾(むじゅん)― 心に相反する思いがあること。
- 躊躇(ちゅうちょ)― 決断できず迷うこと。
- 葛藤(かっとう)― 相反する感情が争うこと。
- 迷い(まよい)― 心が定まらない状態。
- 悩み(なやみ)― 心を苦しめる思いや問題。
- ためらい ― 行動を控え迷うこと。
- 複雑な思い(ふくざつなおもい)― 喜びと悲しみが交錯する心情。
- 哀歓(あいかん)― 喜びと悲しみの両方を含む感情。
- 感慨(かんがい)― 深く心にしみる思い。
- 郷愁(きょうしゅう)― 故郷を懐かしみ寂しさを覚える。
- 心残り(こころのこり)― 満足しきれず未練を抱くこと。
- 悲喜交々(ひきこもごも)― 喜びと悲しみが入り混じること。
- 複雑な心境(ふくざつなしんきょう)― 言葉にしづらい入り混じった感情。
- 居たたまれない(いたたまれない)― その場にいられないほど心苦しい。
- 悲壮感(ひそうかん)― 悲しみと覚悟が入り混じった感情。
古語から現代語まで感情表現を使い分けよう
現代の日常で使う「嬉しい」「悲しい」から、古典に登場する「あはれ」「かなし」まで、それぞれに深い情緒が込められています。
こうした表現を知り、使い分けることで、自己表現の幅が広がるだけでなく、相手の気持ちをより丁寧に理解する力も育まれます。
ぜひ日常の会話や文章に取り入れて、言葉を通して感情をより深く理解し、豊かなコミュニケーションへとつなげてください。
コメント